murawaki の雑記

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Mongol Elements in Manchu


Mongol Elements in Manchu: A Study of Mongol Correspondences to Manchu Lexicon by William Rozycki.

書評のまねごと。金にならないことが明らかすぎるからアフィリエイトはやらない

満洲語とモンゴル語を少し調べてみると、両者が似ているとわかる。明らかに同源の単語があるだけでなく、文法的な共通点もある。例えば、満洲語は、他のツングース諸語と違い、動詞語幹を単独で使うと命令形になる。ただし、大抵の比較言語学と同様、本書が扱うのは単語。

言語同士が似ているということが意味することには二つが考えられる。

  1. 同系統
  2. 借用関係 (時期, 方向?)

じゃあどうやって分類するかという問題になる。そのための手がかりについて、本書が言うには、Loan contact can be established on phonological, semantic and etymological grounds. このうち phonological method は説明不要? semantic method というのは、借用によって意味の範囲が限定されるという経験則。例えば「変態」が hentai になると、アニメや漫画に限定されるとか。etymological method は派生形を借用した場合には、派生元の形を持つ言語が借用元。

本書は基本的には辞書形式で、満洲語見出しに対して、モンゴル語やその他の言語との関係を述べる。借用の時期や方向も認定している。ただし、個々の単語に対する認定についてそんなに詳しく説明しない。それでも、アルタイ語族説は無理筋だと確認するには充分か。

他のツングース系の言語との比較はちゃんとやっている。漢語からの借用も少し出てくる。テュルク系言語は古代ウイグル語の仏教用語をのぞいてほとんど説明されないで、単にモンゴル語から満洲語に借用されたことになっている。