murawaki の雑記

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閉鎖空間に飲み込まれたくない

連休中にウルムチカシュガルを経由して、その先の某所に行って帰ってきた。*1その時思ったことのメモ。興味があるのはこの地域の言語状態。しかし判断材料が少なくて偏っている。具体的には、実際に会話した人、町の看板、それに本屋の書籍。まずはこれらの材料を並べてみる。

実際に会話した人。これは特にサンプルが偏っている。全体的に言えること。ウイグル人は英語がまったくと言っていいほど通じない。漢人も基本的に通じないが、場所によっては話せる人間が配置されている。しかし、道中、空港以外で観光客をまったく見かけなかったことを考えると、まともな観光地にいけば状況が違っているのかもしれない。行った先ではいずれも、観光客相手に商売するという概念が存在しないようだった。そもそも誰もこちらに話しかけてこない。

会話したウイグル人はタクシーの運転手ばかり。連中には英語が全く通じない。中国語は話せるようだ。ただし読み書きは怪しい。メモに「机场」と書いても理解されなかった。ウルムチではタクシーは漢人ばかり。こちらも英語が通じない。ごく基本的な単語でも受け付けない。

カシュガルの空港で客引きをやっていた観光業者の漢人のおばちゃんは英語が通じた。というか、ウイグル人のタクシー運転手に英語が通じずに往生しているところにやってきて、客 (つまり我々) を奪っていった。割と残念な光景。そして、そのおばちゃんが連れてきた漢人の運転手には英語がまったく通じないという落ち。

ホテル。フロントは漢人ばかり。安いところでは全く通じない。高いホテル*2なら通じた。

空港。インフォメーションで、便の変更について問い合わせたとき、最初の漢人は英語が通じず、ウイグル人らしき人を連れてきた。漢人以外で英語が通じたのはこの人だけ。空港の係りでも英語ができない人がかなりいる。客室乗務員はさすがに英語が通じる。しかし漢人ばかり。*3

次は町の看板。ウルムチでもカシュガルでも漢人が進出しすぎで残念な感じ。町中に集中しているので人口統計以上に存在感がある。中国語しか書いていない看板も少なくない。ただし、どちらの町にもウイグル人地区があって、そこには本当にウイグル人しかいない。しかし、そんな場所でも中国語が併記されている。需要があるとは思えないのだが。何らかの強制力が働いているのだろうか。

道路標識は2言語。しかし漢語が大きくて遠くからでも視認できるが、アラビア文字が小さくて、動きながらではなかなか読めない。ウイグル人以外の自治県で何語で表記されているのか分からなかった。中国語と英語だけの標識もあった。

本屋。*4店舗の一部が少数民族コーナーになっていて、それ以外は中国語ばかり。中国語の方は、語学としての英語の本がやたら多い。辞書も山積み。*5ウイグル語の語学は圧倒的に中国語と結びつけられている。会話本とか、専門用語の対訳集とかばかり。英語は数えるほどしかない。

さて、以上から推測できるのは、漢人がせっせと英語を勉強している一方で、ウイグル人が中国語をやっているという構図。だとすると不幸な状況だ。この世界で生きていくのに必要なのは、寄って立つべき母語と通信に必要な英語だけだ。中国語なんてやっても仕方がない。巨大な閉鎖空間に吸い込まれるのがおち。何とか中国語のかわりに英語ができるようになる体制にならないものか。

*1:本当に行って帰ってきた。というのは時間の大半を移動に費やしたから。

*2:日本と値段が変わらない。

*3:しかしなぜか coke が通じない。仕方なく「可乐」と言っていたら、最後の乗務員に coke と確認されてイラっときた。ちなみに中国語で口にしたのはこの「可乐」と道の名前の「长江路」だけ。他は Thank You を含めて英語で押し通した。

*4:余った時間でカシュガルで1軒、ウルムチで2軒の本屋に行った。結果的に、下手な観光地に行くよりもよほど正解だった。アンテナにかからない本の存在を知るには本屋に行くのが一番。しかし、やっぱり本屋は都会でないと話にならない。

*5:語学のコーナーの隣が試験対策。ここもやたら充実していた。そしてなぜか数学の本が試験対策コーナーの隅に配置されていた。物理や化学は別なのに。