基礎語彙データの所在
単なるメモ書き。一つ前の記事でも見たように、Lee and Hasegawa (2011) の基礎語彙データは奄美・沖縄 (北琉球) 部分が貧弱。わずか 2 箇所しか扱っていない。宮古・八重山 (先島 = 南琉球) はかなり網羅的なのに。『現代日本語方言大辞典』(1992) を『南琉球の方言基礎語彙』(1988) で補完する形でデータが作成されているから。私はこの点が不満。彼らのその後の研究動向を見るに、増補版を出してくれそうな雰囲気はない。そこで、自分で補うという選択肢を考えた。そのために利用できる文献を収集してきた。まずは文献とその調査地点を並べてみる。比較の手間を考え、ひとまず平山輝男が関わっているものに対象を限定する。*1
平山輝男、大島一郎、中本正智『琉球方言の総合的研究』(1966): アクセント: 表記なし
- 名瀬 (奄美大島 (北))
- 古仁屋 (奄美大島 (南))
- 亀津 (徳之島)
- 志戸桶 (喜界島)
- 瀬利覚 (沖永良部島 (西))
- 茶花 (与論島)
- 辺土名 (沖縄 (北))
- 伊江島 (沖縄 (北))
- 奥武 (沖縄 (南))
- 平良
- 池間
- 石垣
- 波照間
平山輝男編『薩南諸島の総合的研究』(1969) アクセント: 音声表記 + 音韻表記
- 名瀬 (奄美大島 (北))
- (中種子, 宮之浦, 尾之間, 黒島, 宝島)
平山輝男編著『琉球宮古島諸島方言基礎語彙の総合的研究』(1983) アクセント: 表記なし
- 平良
- 池間
- 長浜
平山輝男編著『奄美方言基礎語彙の研究』(1986) アクセント: 音声表記 + 音韻表記
平山輝男ほか編『現代日本語方言大辞典』(1992): アクセント: 音声表記 + 音韻表記
その他
結論としては、『琉球方言の総合的研究』(1966) と『奄美方言基礎語彙の研究』(1986) を組み合わせれば良さそう。これで奄美はバランスよく扱える。一方、沖縄中南部がやたら手薄なのが気にかかる。というか、「沖縄」と表記されている言語が北部のものであることに今頃になって気付いた。中本 (1981) などは、首里・那覇を中心とした周圏論的分布について度々指摘しているけど、いま手元にある平山系データだけではこれを実証しようがない。